Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

第39回 Hip Joint コラム 2018.12.01

骨の銀行があることを知っていますか?

北里大学医学部整形外科学 診療講師 福島健介 写真
福島健介
北里大学医学部整形外科学 診療講師

 近年、股関節疾患に対する人工股関節全置換術は、用いられている材質の改良もあって長期にわたる良好な臨床成績が報告されています。加えて、術後スポーツ活動を含めて高度な日常生活動作も可能となってきており、比較的若年の患者さんに対する手術も増えつつあります。一方で、設置された人工股関節に様々な理由でゆるみが生じ、入れ替えの手術(人工股関節再置換術)が必要となる患者さんも増加してきています。その手術の際に大きな問題となるのが、人工関節を設置する土台となる「骨」の欠損です。人工股関節における骨は、例えれば家を建てる際の地盤に相当します。骨がなければ安定した人工関節の設置は困難で、長期の成績は望むことが出来ません。
 骨を補てんする材料としては、主に自家骨(自分の骨)、同種骨(他人の骨)、人工骨の3種類が挙げられます。自家骨は感染症の伝播等もなく安全ですが、自分の正常な場所から採取するため採取量に限りがあり、採取するために新たな傷をつけて手術をしなくてはならないという欠点があります。人工骨は安全で採取の必要がなく必要な量を補てんすることが可能ですが、非常に高価で体の中に異物として残存する可能性があります。同種骨は輸血と同じように、感染症伝播のリスクはありますが、比較的安価で必要な量を補てんすることが可能です。また移植後、自己の細胞が骨内に入り込んで自分の骨に置き換わるという利点があり、生物学的な股関節の再建が可能です。しかしながら、同種骨移植は同種骨が安全に採取、処理、保存されていることが前提で成り立っています。これを担っているのが骨の銀行(骨バンク)です。
 骨バンクには施設内で採取された骨(代表的なものは人工関節や大腿骨頸部骨折の際に採取された大腿骨頭)を処理、保存している施設内骨バンクと他施設で採取された骨も処理、保存を行い、地域の同種骨を必要としている施設へ供給も行っている地域骨バンクがあります。欧米では同種骨を人工関節のようにインプラントとして処理、販売している業者が存在し、非常に活発に同種骨移植が行われています。対してわが国では日本組織移植学会が認定した地域骨バンクは現在わずか3施設(北里大学病院骨バンク、東海骨バンク、熊本骨バンク協会)のみで、同種骨移植が行える施設は非常に限られているのが現状です。わが国では骨バンク事業で利益を出してはならず、正直に言って運営は厳しい状況ですが日本全国で安全な同種骨をより容易に使用できるように努力しています。ご興味を持たれた方は、是非下記ホームページをご参照いただければ幸甚です。
北里大学病院骨バンク
http://www.khp.kitasato-u.ac.jp/SKA/seikei/bone/annai/aisathu.html


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