Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第2回 Hip Joint コラム 2015.10.07

「股関節疾患今昔」

泉田良一先生 写真
泉田 良一
(公財)日本股関節研究振興財団 専務理事
社会福祉法人仁生社江戸川病院
慶友人工関節センター長

 整形外科医となって40年以上が経過したが、その間の日本の人口動態の激変につれて、股関節疾患の様相は激変した。 まず大きかったのは出生率の低下と先天性股関節脱臼の激減である。昭和50年当時全出生の1~2%に股関節の異常があるといわれていたが、現在は0.1~0.2%と1/10にまで減少している。昨今は1年間の出生数が約100万人であるから、新患の発生数は多くても2000人前後である。各地に小児病院が設立されたこともあって、一般病院では股関節脱臼はおろか小児をみることすら希になっている。
 一方高齢者の増加に伴って、以前見られなかった高齢発症の関節症を見ることが増えてきている。以前は形成不全とか何か先行する病態が無ければ、変形が多発する膝関節と違って、股関節は一生ものと言っていたが、それが怪しくなってきた。30年ぐらい前なら70歳を過ぎたら骨折以外手術はやらないと思っていたのに、今では手術症例は70代が中心である
 また戦後の各家族化も大きな影を落としている。古い日本の家族形態なら、ある程度の年齢になると子供に跡を譲って隠居するという、いわば双六の上がりのような道があったが、各家族化した現在では年老いても、誰も面倒を見てくれる人が居ない。勿論介護保険を使うという手は残されているが、痒いところに手が届く訳では無く、人生を辞去するその時まで自分のことは自分でやらなければならない。嫌でも応でも、生きるために手術を拒否することができない。股関節症の手術件数が鰻上りに増えている所以である。
 今から10年後の2025年に団塊の世代が揃って後期高齢者となる。過去に例を見ない超々高齢社会の到来である。その危機的状況を乗り越えるためにも、いやそのような中でも人間が自身の尊厳を保つためにも、いつまでも自分の足で歩いていかなければならない。 そのために当財団の果たすべき役割は大きいと考える。関係各位の益々のご鞭撻とご協力を求めること切である。


股関節らくらく募金のご案内はこちらから

股関節クレジット募金ご案内 バナー
このページのTOPへ