Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第20回 Hip Joint コラム 2017.05.01

「赤ちゃんの股関節脱臼に注意しましょう」

大谷卓也 写真 画像

大谷卓也
東京慈恵会医科大学整形外科学講座教授
第三病院 整形外科 診療部長

 日本人の成人股関節障害の原因として最も多いのは「生まれつき股関節の作りが不十分で、成長、加齢とともに徐々に障害が現れる」というパターンです。形態が生まれつき不十分であることを「発育性股関節形成不全」と呼びますが、この言葉は広い病態を含んでおり、股関節が完全に脱臼している(はずれている)もの(図1)、正常と脱臼の中間にあたる亜脱臼状態のもの、脱臼も亜脱臼もないが寛骨臼(骨頭を被う骨盤の屋根)がやや小さいものなど、その程度はさまざまです。このような発育性股関節形成不全、とりわけ脱臼については、できるだけ早く見つけ出して治療を開始することが重要です。このような股関節の問題を含め、赤ちゃんの健康状態をチェックするために行政が定める乳児健診が行われますが、チェック項目は小児科的な異常を含めて非常に多いこともあり、健診で赤ちゃんの股関節異常を見つけることは容易ではありません。その結果、近年、国内で年間に100人以上の赤ちゃんの脱臼が、歩行開始後まで発見できていないことが判明し問題となっています。そこで、生後3〜6か月で行われる1次健診を強化し、より多くの赤ちゃんを整形外科が実施する2次検診に紹介してレントゲンやエコー検査でチェックすべきであると提唱されるようになりました。1次健診で股関節の動きが悪い場合はもちろんですが、脱臼危険因子(1.向き癖がある、2.女の子である、3.家族に股関節の悪い人がいる、4.逆子(骨盤位)で生まれた、5.寒い地域や時期に生まれた、6.鼡径〜大腿の皮膚溝に著明な左右差がある、など)を複数持つような場合も注意が必要であり、状況により2次検診を行うべきとされています(図2)。これにより完全脱臼のみならず、高度の亜脱臼や寛骨臼形成不全も発見して早期の治療が行われることが期待されているのです。
 発育性股関節形成不全の多くは、早期に発見して治療すれば良好に治癒します。皆様のお子様やお孫さんにつきましても、行政が定める乳児期の健診を必ず受診し、前述したような脱臼危険因子が複数重なっているような場合は、2次検診の必要性について1次健診の担当医とよくご相談されることをお勧めします。

1歳児の左股関節脱臼 図 ヒップジョイントコラム

新生児の家族への指導パンフレット ヒップジョイントコラム

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