Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

第27回 Hip Joint コラム 2017.12.01

「人工関節の寿命は予測できるの?」

京都大学大学院工学研究科機械理工学専攻 医療工学分野 教授 富田直秀 先生写真 画像

富田 直秀
京都大学医療工学分野 教授

 人工心臓,眼内レンズ,人工内耳,ペースメーカーなど,数多くの生体材料が体の中から人の生活を支えています。人工関節は,最も成功した生体材料の一つであって,体の中から痛みのない行動を支え,その寿命は今も延びつつあります。手術を受けてから2~数年後までの短期では,関節の脱臼や感染,骨折などがトラブルの主な原因で,それ以降の長期ではルーズニングという,関節のゆるみが人工関節の寿命を決定します。無理な力が人工関節と骨の間に加わってゆるみが起きるのですが,人工関節から少しずつ出る摩耗粉がこのルーズニングに大きくかかわっていることがわかっています。そこで,関節の動きを再現して人工関節の耐久試験をする関節シミュレータ試験では,人工関節から摩耗粉がどれだけ出るのかを測ります。細かな摩耗粉の方がルーズニングを起こしやすいことがわかっていますし,体の中のとても小さな感染や,他の生体材料に附着しているエンドトキシンという物資や体の中にあって炎症を助ける物質が摩耗粉の表面に付着して,ルーズニングを助長しますので,ただ単に摩耗の量を測っただけではその寿命を予測することができません。
 人工関節の寿命を予測するうえで,現在最も信用されているのが,レジストレーションといって,使用された人工関節がどのような運命をたどったかをすべて記録する方法です.けれども,この方法にも大きな落とし穴があります。たとえば,ルーズニングは時代とともに減少してきており,それは人工関節技術の発達ばかりではなく,感染の制御や,様々な生体材料からエンドトキシンを取り除く技術の発展,抗炎症剤,骨粗鬆治療薬,その他の薬を服用している人の増加によって減ってきていると考えることもできるからです。つまり,手術室の環境,手術技術の向上,そうして,生体材料の管理や炎症の制御といった,人工関節以外の様々な環境の変化が,人工関節の寿命を延ばしている面も大きいわけです。
  この文章を書いています著者(富田直秀)は,エンジニアと医者の両方の立場から研究をしていますので,まず,人工関節の寿命を予測できるしっかりとした科学的な方法を確立したいと考えています。そうして,できれば,スポーツや仕事も続けることのできるような,その人に合った人工関節を作りたいと考えています。


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