Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

第28回 Hip Joint コラム 2018.01.01

「呼吸を整え体を動かそう」

東京有明医療大学学長 本間生夫 先生写真 画像

本間生夫
東京有明医療大学 学長

 私たちの体重の70%は骨格とそこに付着する筋肉(骨格筋)の重量で成り立っています。骨格筋は骨格(関節)を動かすためについており、骨格筋が働かなくては身体は動きません。日々、私たちは食事をとり、栄養素を体内に取り入れています。骨格筋が働くためには取り入れた栄養素を燃焼させ、エネルギーを作り出さなくてはなりません。この過程をエネルギー代謝と呼んでいますが、栄養素を燃焼させるには酸素が必要です。体内に栄養素はあっても酸素がないと、エネルギーを作り出すことができず、骨格筋も動かすことができないのです。酸素は外界から呼吸で体内に取り入れていますから、骨格筋を働かせて身体を動かすことと呼吸は切っても切れない関係にある、と言えます。運動をしているときにはよりエネルギーが必要であり、呼吸も大きく動き、酸素を多量に取り入れます。しかし、呼吸はエネルギー代謝のためだけに働いているわけではありません。突拍子もない話と受け止められるかもしれませんが、呼吸は情動(喜怒哀楽の感情)と密接にかかわりあっています。呼吸のコントロールは脳の中の呼吸中枢で行われます。エネルギー代謝に関係する呼吸中枢は酸素や二酸化炭素の量を調節しますが、感情を作り出している脳にも呼吸中枢が存在し、感情と一体的に動いています。感情が変化すれば呼吸も変化し、逆に呼吸が変化すれば感情も変化します。この呼吸を情動呼吸と呼んでいます。普段の無意識の呼吸は代謝性呼吸と情動呼吸が同時に働いていますが、情動呼吸は呼吸数の変化として現れます。不安な状態のときには速い呼吸になり、必然的に浅い呼吸になります。瞑想では呼吸がゆっくりになり、こころが落ち着きますが、ヨガやマインドフルネスなども呼吸をコントロールして気分を落ち着かせ、爽やかにします。また、浅く速い呼吸は換気効率が悪く、代謝性呼吸にも良くないのです。体を動かすことは良い意味で呼吸を刺激します。激しく動く必要はありません。腕を少し大きめに振って歩くのが良いでしょう。呼吸を整え体を動かしましょう。

情動性呼吸、代謝性呼吸 図 ヒップジョイントコラム28

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