Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

第37回 Hip Joint コラム 2018.10.01

股関節手術でAIは整形外科医を超えられるか?

船橋整形外科病院 院長 白土英明 写真
白土英明
船橋整形病院 院長

 最近、新聞、雑誌、テレビなどで人工知能、AIという言葉を目にすることが多いです。車の分野では自動運転という言葉が流行していて、日本でも官民をあげて取り組もうとしております。最近の車は各種警報装置が整備されており、運転中にいろいろな音がしますが、私自身はほとんど邪魔くさいと思っており、時には警報音に驚いてその原因を探っていると、周りが見えておらず、かえって危険に感じることすらあります。カーナビゲーションもそうです。つい頼ってしまいますが、すっかり道を覚えなくなりました。さらにナビにも性能に差があり、レンターカーを借りたとき、ナビの性能が今ひとつで、結局地図が頼りという経験もあります。ましてや自動運転に頼ろうとは思いません。もし、自分で安全に運転できるテクニックや判断力がなくなったら、免許は返上するつもりです。
 整形外科の股関節手術の世界でもナビゲーションシステムが導入され、最近ではAI,さらにはそれを利用したロボットを用いる手術が導入され始めています。はたしてこれらは股関節の手術において主流になるでしょうか?現在、日本において人工関節登録制度におけるナビゲーションの使用率は10%以下で、ほとんどの施設では用いられていません。昔はレントゲン画像だけで術前計画を行っていたのですが、最近はCTが進化しており、さらにCT像を利用した術前計画用のソフトも開発されています。これらを駆使すれば十分に正確な手術が行えると思っております。さらにアメリカを中心にロボットによる手術を行うことが研究さらには実践されつつあります。しかし手術はあくまでも人間が対象であり、人それぞれ個人差、個体差があり、それをAIが適切に識別して手術を完遂することは困難です。特に、日本では発育性股関節形成不全に基づく二次性変形性股関節症が多く、股関節の変形が著しく、またその形態は千差万別です。ドクターの経験と頭脳を駆使しなければならない点が多いと考えます。今後医療の世界にもAIを活用することが多くなりますが、囲碁や将棋のように整形外科医がAIに負ける時代はまだまだ遠い将来と思います。若手の医師を育てる上で、AIなどに頼らず、自分の頭で考えて手術計画を立てられる人材を育成していく必要があると思います。


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