Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

第38回 Hip Joint コラム 2018.11.01

悠々閑々外来の妙

関西医科大学総合医療センター人工関節センター・理事長特命教授 飯田寛 写真
飯田寛和
関西医科大学総合医療センター
人工関節センター・理事長特命教授

 主任教授を昨年定年退任しました。既に典型的手術を数多くこなすことは後輩にバトンを渡していましたので、年の功と経験を生かせる股関節関係での難手術やサルベージ手術でお役に立ちたいと考え、分院で診療を継続させて頂くことになりました。
 股関節手術後に年一回の定期検診をさせてもらっていた多くの患者さんも本院の後輩にまかせ、他院から紹介されてくる訳あり患者さんのみを診させて頂くことにしました。
 従来から初診患者さんには特別時間をかけて診療していたつもりでしたが、無意識に時間を気にしていたと思います。それが一変し、たっぷりある時間を使っての診療は、患者さんだけでなく、ご家族やスタッフの満足した表情にあらわれ、医師としての充足感に満ちる機会が増えました。
 既に診断を受けていても、時間をかけて話を聞いている間に診断に疑問を生じ、正解にいたることもあります。股関節痛の元の原因が鼻腔のできものであった経験もしました。
  手術適応に迷う場合、その要因が自覚症状、他覚症状、画像所見などいろいろで、何が意思決定のためのキーかを探り出すにも余裕が生まれます。長々と話した最後に重要な情報が患者さんの口からでることもあります。不安が解消したことで現状に適応する姿勢が生まれ手術を回避した患者さんもおられました。
  既に複数回の股関節手術を受けておられると、病態が複雑な上、隠された過去の負の体験が意思決定に大きく影響していることもあります。
  最近の経験では、50年前に受けた人工股関節の弛みと移動、併発した感染が骨盤内に及び腹腔内膿瘍、敗血症になり後輩がいる関連病院での緊急開腹手術で一命をとりとめた患者さんが、遷延している感染に対する追加手術の同意をどうしてもされないとのことで入院のまま外来受診されました。頑なな雰囲気を感じながらバックグラウンドを聞き出し、現病歴と理学所見、画像所見を検討して各所見の意味を説明し、再度話を聞き方針を考えながら、種々たとえ話をして反応を見、私自身の過去の成功・失敗経験を語り、結論として推奨できる治療方針を話したところ、「先生の話はよくわかりすぎて断るわけにいかん」と言って頂きました。ご家族もよく理解できましたと言われ皆の意思がまとまったので、その後関連病院での人工関節抜去セメントビーズ充填、当院での二期的再置換を行い感染は治癒し機能再建もできました。
  多忙な先生方から叱られそうですが、時間の余裕からスローライフになり趣味に生かせる時間も増え、この得難い環境を診療に生かしたいと感じています。


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