Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第4回 Hip Joint コラム 2015.12.01

「人工股関節置換術と関節温存手術」

岩本幸英先生 写真
岩本 幸英
九州大学整形外科 教授

 股関節の痛みで悩み、手術を受ける患者さんはたくさんおられます。股関節痛というのは、人間が自覚する痛みの中でもかなり「強い」痛みであり、「この痛みがなくなるのなら」という思いで手術を選択されるのだと思います。もちろん痛いだけではなく、関節の変形が強くなれば、関節の動きも悪くなり、歩き方がぎこちなくなり、日常生活に支障がでてきます。このような諸症状をズバッと解決する一つの手術として、人工股関節置換術(図1)があります。痛んでいる股関節を取り除き人工物に置き換える手術で、欧米では20世紀前半から人工股関節の開発がすすみ、その後日本でも徐々に行われるようになり、今や年間50,000件を超える人工股関節の手術が行われています。あの「強い」痛みがスパッと無くなるので、患者さんが本当に喜ばれる手術です。「人生が変わりました」と言われることも少なくありません。懸念されていた人工物の耐久性という点においても、以前は10年持たない時代でしたが、今や20年以上が期待できる時代です。一昔前までは、患者さんの年齢が40歳の場合、人工関節以外に方法がなければ、「あと20年我慢しなさい」、という時代でした。しかし今は耐久性が向上しているため、手術を受ける患者さんの年齢は明らかに若年齢化してきています。
 人工股関節は本当に良い手術ですが、進行した股関節病変に対する最終手段であることには間違いありません。股関節の手術には、人工関節だけではなく、関節を温存する骨切り手術というものがあり、多くは日本で生まれた手術です(図2)。種々の骨切り手術は日本のお家芸といっても良い、世界に誇れる手術です。患者さんのために、今後、人工股関節置換術だけでなく、骨切り手術普及に向けた取り組みを行いたいと思っています。

図1

図1 末期変形性股関節症に対する人工股関節置換術

図2

図2 初期変形性股関節症に対する寬骨臼移動術(代表的な関節温存骨切り術)

屋根(臼蓋、きゅうがい)の覆い方が不充分なことが股関節痛の原因だったので、
骨切りを行い十分覆うようにしたところ、股関節痛が消失した。


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