Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

第40回 Hip Joint コラム 2019.01.01

医者と弁護士

弁護士 谷 眞人 日本股関節研究振興財団評議員 写真
谷 眞人
弁護士
日本股関節研究振興財団評議員

 伊丹康人先生とのご縁で日本股関節研究振興財団の評議員をさせていただいている弁護士の谷眞人といいます。来年で弁護士生活30年を迎えます。私は股関節に関しては素人ですが、今日は弁護士の立場から医者と弁護士の仕事について、感じていることをお話したいと思います。
  世の中にプロフェッションという言葉があります。が、1870年生まれのアメリカの法学者であるロスコー・パウンドという学者が、世の中の3大プロフェッションに当たる職業として、医者と牧師と弁護士を挙げ、その共通の特質として、専門性、倫理性、そして組織性をあげています。プロフェッションの語源のプロフェス(profess)は、「神の前で告白する、誓う」という意味だそうですが、医者、牧師、弁護士がいずれもいずれも「人のために尽くすよう天地神明に誓うことが求められる専門職」であることから、これらの職業を三大プロフェッションというのだそうです。ところが、この語源の解釈には実はもう一つ説があります。それは、医者も牧師も弁護士もいずれも患者、信者、依頼者から秘密を告白される(profess)される職業であるから、プロフェッションと言われるというものです。私としては、後者の解釈の方がしっくりきます。お医者様もそうだと思いますが、我々弁護士も日々の仕事の中で、実に様々な秘密を打ち明けられます。おそらく私生活上で一番親しいと思われる、親や配偶者、親友も知らないような秘密を、弁護士には包み隠さず伝えて、相談をすることになります。本当にそんなことをしてしまったのか、そんなことがあるのか、と驚くような場合もあります。
  そのため、弁護士倫理上、世界のどの国の倫理規定を見ても、必ず明記されている弁護士の義務の一つが守秘義務です。日本でも弁護士法23条や、倫理を定めた弁護士職務基本規程23条にも、この守秘義務が明記されています。世界の弁護士に共通する二大倫理規範というのがあって、そのうちの一つがこの守秘義務です。ちなみにもう一つの義務は利益相反行為の禁止とされています。弁護士はどこまで依頼者の味方でなければならず、二君に仕えることがあってはいけないのです。
  さて、私が弁護士になってみて感じたもう一つのことは、弁護士の仕事が人間を相手にしたカウンセラー的な面が非常に強いという点です。比喩的に言えば、必要とされる能力のうち、法律知識は3割、残りの7割の能力は、むしろ聞き取る力、言葉の端々から本当は何を言いたいのかを探し出す力、そしてこの人に平穏な生活を取り戻して貰うには何が一番適切かという処方箋を出す力だと感じています。長く弁護士をしていると、表面上の言葉が本心を述べているのではないと見抜く力もついてきますし、訴訟に勝つことが一番の解決ではないことも多々あります。このような考え方は、きっとお医者様にも共通する部分があるのではないかと勝手に考えています。 日々の仕事は決して楽ではありませんが、依頼者の表情が、事務所の来たときよりも帰るときに、少しでも和らいでいたら、それが弁護士としての無上の喜びと思い、毎日仕事場に向かうことにしています。

以 上


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