Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第43回 Hip Joint コラム 2019.4.01

「3Dプリンターの医療機器への応用」

帝人ナカシマメディカル株式会社 代表取締役会長 中島義雄 写真 画像
中島 義雄
帝人ナカシマメディカル株式会社
代表取締役会長

 3Dプリンターが世に出てから一時期のブームが過ぎ、実用化のステージに移ってきている。医療機器の分野でも、患者さんのMRIやCTなどの医療画像をベースに、臓器の3Dモデルの作成や、金属粉末をレーザや電子ビームで溶解させながら3次元形状を作成できる3Dプリンターの出現により、インプラントの製造にも利用されはじめている。
 当社では2007年より3Dプリンターを導入し、様々な製品に活用してきた。最初に導入されたのが、滅菌可能なナイロン樹脂で造形可能な3Dプリンターを利用した、患者別カッティングガイドである。変形治癒した上肢の矯正骨切りガイド(写真1)や、膝関節手術用のガイドを提供し、手術精度の向上に寄与している。さらに、股関節分野では、臼蓋カップの設置ガイドや、臼蓋回転骨切りのガイドの研究も進めている。また、金属粉末を利用した3Dプリンターの導入により、3Dモデルの形状を設計通りに製造できる特徴を活かして、骨の成長を促す多孔質形状を備えた、臼蓋カップの販売を2015年に開始した。2018年には、3Dプリンターで製造した多孔質形状を、人工股関節のステムに接合した製品(写真2)の販売を開始した。現状では、強度面の不安からステムそのものを3Dプリンターで製造することは困難であるが、将来的には様々な製品への展開が期待できる。
 3Dプリンターの特徴は、三次元CADで作成した3Dモデル通りの形状が製造できることと、一品生産が容易であることである。将来的には患者様ごとに異なる骨形状や疾患に最適なインプラント形状を設計し、3Dプリンターで製造できれば、究極のカスタムメイド医療になると期待している。こうしたカスタムメイドインプラントは、現在各メーカが抱えている膨大な製品在庫の圧縮にも貢献し、医療経済上もメリットがあると考えている。当社では、3台の金属造形3Dプリンター、3台の樹脂造形3Dプリンターを活用して、様々な用途への適用を研究・開発すると同時に、新しい材料の開発にも活用してきた。これからも医師や患者様のニーズに応じた製品の提供を目指して行きたい。

  帝人ナカシマメディカル社製3Dプリンターを用いた、人工股関節、カッティングガイド 画像

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