Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第45回 Hip Joint コラム 2019.6.01

「変形性股関節症に対する骨切り術とテクノロジー」

神戸大学医学部整形外科 助教 林 申也 先生 画像
林 申也
神戸大学医学部 整形外科
助授

 我が国では変形性股関節症になる患者さんの90パーセントは股関節が生まれた時点ですでに脱臼しているか,赤ちゃんが胎内にいる時点の姿勢異常に寛骨臼形成不全などが伴う亜脱臼状態や生後に脱臼しうる状態である発育性股関節形成不全が原因となっております。変形性股関節症は初期から末期までの段階がありますが初期―進行期までの股関節症に対する人工関節以外の手術療法として1. 寛骨臼回転骨切り術、2. キアリ骨盤骨切り術、 3. 臼蓋形成術の3術式が広くわが国では行われていてそれぞれ良好な成績を収めています。我々もこのような変形性股関節症の患者様に対して寛骨臼回転骨切り術を行っておりますが、最近この骨切り術においてナビゲーションシステムを使用して手術が行えるようになってきましたのでご紹介します。
 ナビゲーションシステムは皆さま車に搭載されているカーナビゲーションをご存知と思われますが、位置情報を正確に画面で確認できるシステムです。もちろんカーナビゲーションとは構造が多少異なりますが、医療分野においても近年この技術が応用されております。整形外科、特に股関節分野で最初にこのナビゲーションシステムが応用されたのは人工股関節全置換術の手術ですが、現在骨切り術でも応用されてきています。骨切り術でナビゲーションをどのように利用するのかといいますと、手術中に骨盤の骨のどこを切っているかが正確に画面上で確認できるシステムです(図)。このシステムを使用すると、手術中にCT画像の情報と実際の患者様の骨の情報の位置合わせを行うことで、手術前に計画した骨を切る位置が正確に画面上に表示され、手術が正確に行えるというメリットがあります。さらにこの手術をする際に、もしナビゲーションがなければ、通常レントゲン透視で骨の位置を確認しながら骨切りを行うことが多いのですが、ナビゲーションを使うことでレントゲン透視をあまり使わずに手術が可能となり患者様、医療従事者の両方に放射線被ばく量を減らすといった観点からもメリットとなります。このように整形外科分野においても次々に新しいテクノロジーが導入されてきている状況ですが、人工股関節手術ではすでにロボットを使った手術も開始されており、今後も手術をより正確に行うためのテクノロジーは進歩していくことが予想されますので患者様にとってもメリットとなってくるでしょう。


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