Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第46回 Hip Joint コラム 2019.7.01

「生き方が役に出る」

広島県立障害者リハビリテーションセンター 所長 安永裕司先生 画像
安永裕司
広島県立障害者リハビリテーションセンター
所長

 2014年に亡くなった名優の高倉 健さんが、生前にテレビで「普段どんな生活をしているか、どんな人と出会ってきたか、何に感動し何に感謝しているか、そうした役者個人の生き方が役に出ると思っている。」、「俳優にとって大切なのは、造形と人生経験と本人の生き方。生き方が出るのです。」とおしゃっているのを聴いて、どのような職業にも当てはまるが、整形外科医も同じであると直感した。
 ある程度経験を積んだ整形外科医は、他の医師の骨・関節の術前と術後のレントゲンを見れば、その術者の疾患に対する治療法の考え方や手術技術を直ちに評価できると言っても過言ではない。
 股関節外科領域では、近年、人工股関節の材質の改善による耐久性の向上と短期入院期間のために日本においても人工股関節手術が急増している。しかし、耐久性が向上したとはいえ、人生100年時代となった現在、50年以上の耐久性を保証することはまだ誰にもできないのである。20歳前後の若年者の特発性大腿骨頭壊死症や頸部骨折後の骨頭壊死症あるいは50歳前後の寛骨臼形成不全による初期関節症に対しても躊躇なく人工股関節を行う医師も少なくない。骨切り術による関節温存手術を見たり学んだりする機会がなかったのか、若年者の骨・関節の再生能力の高さを見る機会がなかったのか、知識と経験の欠如が垣間見え、まさに股関節外科医としての生き方が見えてくるのである。
 骨切り術によって、力学的荷重環境を改善すれば、生きた骨・関節は旺盛な再生能力によって、一生使える関節に成りうる可能性がある。故杉岡洋一教授は、これを「骨切り術の妙味」と述べられていたことを印象深く記憶している。「生き方がレントゲン(手術)に出る」ことを心に置いて、これからも股関節外科を究めていきたい。


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