Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第47回 Hip Joint コラム 2019.8.01

「股関節の神秘」

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柳川リハビリテーション病院・病院長 樋口富士男 画像
樋口富士男
柳川リハビリテーション病院・病院長

 体を傷つければ、どこでも痛く血が出る。しかし、関節は切り込まれても痛くないし血も出ない。そのわけは、関節軟骨には神経も血管もないという際立った解剖学的特徴があるからである。しかし、この特徴の起源は、神秘である。
 関節は二つの骨をつなぐ器官で、その臨床的三大機能は、可動性、支持性と無痛性である。関節の構造は、骨の断端の表面を関節軟骨が覆い、関節包に包まれている。関節包の外側は、血液の世界であるが、関節包の内側は透明な関節液の世界である。関節液は、赤血球と白血球がない透明な血漿成分とほぼ同じで、この条件は関節のスムースな潤滑に寄与している。白血球は細菌などの外敵と戦う力があるが、関節液には白血球がないために感染に弱い。関節には神経がないために、外部からのストレスに対する防御反応が起こらない。従って、外的侵襲を受けやすく、障害を起こしやすい。その障害が修復されるには、修復機転を起こす栄養の補給が必要なのだが、血管がないために血液成分による修復が起こりにくい。 軟骨は、その字のごとく軟らかい骨でクッション機能がある。体重がかかれば陥凹するし、体重がかからなくなると膨らんで元の形に戻る。その機能は、軟骨内の成分であるコンドロイチンやヒアルロン酸の量に依存しており、病気になったり高齢になったりするとこれらは減少する。また「関節は、一度障害されると改善する事は無い」と古くからいわれてきた理由は、この神秘的な解剖学的特徴にある。
 人間の股関節の形は、直立二足歩行を始めてから250万年と言う長い時間をかけ、現在の球形へと進化した。その原理は、「骨は機能に応じて形が作られる」というWolffの法則と「変化に対応できたものが残り、子孫を残すことができる」と言うダーウィンの自然淘汰を受けながら作られたのが今の骨格なので、その形は一縷の無駄もなく、究極の美しさと機能を備えている。
 身体各部の長さについては、レオナルド・ダ・ビンチをはじめ古くから、多くの研究がある。特に「黄金比」で説明できる神秘が体のいたるところにあるので、股関節にもこの比が少なからず含まれていると思われる。
 しかし、これまで股関節の重さに注目した研究はほとんどない。大腿骨頭の重さはどのくらいだろうか?大腿骨頭の重さは、体重や身長、病気などの影響を受けるのだろうか?さらに、現在手術治療で頻繁に用いられる人工股関節に関しては、これまで研究論文やパンフレットに重さの記載がないが、人工関節を支える骨は人工関節の重さの影響は受けないのだろうか?など、重さに関する疑問は多い。これからの研究に期待している。


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