Hip Joint コラム

股関節に関する有識者の方々が、様々な切り口で股関節をコラム形式で解説します。

  
第49回 Hip Joint コラム 2019.10.01

『きょうよう』・『きょういく』と股関節

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福岡山王病院長/国際医療福祉大学大学院教授/福岡大学名誉教授 内藤 正俊 画像
内藤 正俊
福岡山王病院長
国際医療福祉大学大学院教授
福岡大学名誉教授

 筆者が生まれた1950年の65歳以上の高齢者人口は411万人で、総人口に対する割合、高齢化率は僅か4.9%でした。当時の平均寿命は男性が59.57歳、女性が62.97歳であり、まさに“低齢社会”でした。爾来見る見るうちに高齢化が進み、68年後の昨年の高齢者人口は3557万人、高齢化率は28・1%、平均寿命は男性が81・25歳、女性が87・32歳であり、世界に冠たる超高齢社会になっています。
 老いても終生活き活きと過ごすことが喫緊の課題となっています。昨年度の自立した生活ができる「健康寿命」は男性72・14歳、女性74・79歳ですので、男性で9年前後、女性で13年前後は日常生活の制限のため要支援・要介護の状態になっています。要支援・要介護の状態になる原因は運動器の障害が第1位で約23%を占め、次に脳血管障害、認知症、衰弱、その他の順です(平成23年度厚労省国民生活基礎調査)。最近では、さらに要支援・要介護の前段階の脆弱な時期が包括的に「フレイル」と呼ばれ話題になっています。「フレイル」はまだ健常な状態へ戻れる時期で、運動器の障害などによる身体的要因が最も多いのですが、他に気力の減退、認知機能の低下などによる精神的要因、閉じこもりによる孤立などの社会的要因も含んだ多面的な概念です。これらの3大要因は互いに他を増悪させながら、放置されると要支援・要介護の状態に進行すると考えられます。この悪循環に陥らないためには活動意欲や社会的交流の原動力となる運動器の機能の温存が極めて大切です。特に肝心なのは移動能力の要である股関節の機能を最後まで保持することです。
 現在、私には敬愛している75歳の患者さんがいらっしゃいます。彼女が64歳の時に右股関節が痛くなり、趣味の卓球や正座での囲碁が困難になったとのことで私の外来を受診なさいました(図1)。そこで右変形性股関節症に対し寛骨臼の骨切り術を行いました。術後11年になられますが、今も週3回の卓球とともに週1回の碁会所での囲碁を楽しんでおられます(図2)。外来でお会いする度にバイタリティーに満ちた“生涯現役”を目指す姿勢に圧倒されています。
 成長期の『教養』・『教育』と同じ様に高齢期には『今日用』・『今日行く』が必須です。いつまでも元気で歩くための活動を行っている日本股関節研究振興財団の役割が益々重要になっています。

図の説明(初診時64歳、女性)

図1:初診時の両股関節正面画像
図2:術後11年後の両股関節正面画像

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