第17回 Hip Joint コラム

「セメントレス人工股関節」
一青 勝雄
順天堂大学 整形外科

客員教授
 1960年代にイギリスの John Charnley(ジョン チャンレイ)先生により開発された人工股関節はポリエチレン製の臼蓋カップと金属製大腿ステムを骨セメントを使用して骨に固定するもので、従来の方法に比べ格段の好成績をおさめました。このCharnley先生のアイデアは改良を重ね、今なお全世界に広く使用されています。
同年代に対岸のフランスでは Robert Judet(ロベール ジュデー)先生が骨セメントを使用しないで骨に固定する人工股関節を開発していました。いわゆるセメントレス人工股関節です。これは骨と接する面の金属表面を加工することにより金属表面に骨新生を生じ骨癒合を促すものであります。その後金属材質、表面加工、デザインの改良によりセメントレス人工股関節も世界で広く使われています。
私はセメントレス人工股関節が開発使用されている初期にフランスに留学し(1977?1979)、Judet先生のお弟子さんのGerald Lord(ジェラール ロード)先生の元でセメントレス人工股関節を学びました。Lord式人工股関節は、ネジ込み式臼蓋カップと表面を細かいビーズ状に加工した大腿ステムを特徴としています。今から約40年前の当時、そのデザインのユニークさに驚かされ、フランス人の発想の豊かさに感動したのを覚えています。
その当時日本でも、当財団の創始者である伊丹先生が世界に先駆けてセメントレス人工股関節を開発されていたことはまさに驚愕であります。 現在のセメントレス人工股関節は、臼蓋カップはドーム型で大腿ステムはより短く大腿骨髄腔に適合するデザインが主流です、表面加工もハイドロキシアパタイト処理が施されるなど各方面で改良がなされています。関節摺動面もポリエチレンの改良やセラミックの使用により長期に安定した成績が得られるようになって来ました。
人工股関節の寿命はセメント、セメントレスに関わらず良くて10年から15年と言われて来ましたが、現在は20年から30年以上も期待出来る時代になっています。人工股関節自体はこのように改良が進み耐久性が向上して来ていますがそれを支える患者さん自身の骨の質が問題です、骨の老化すなわち骨粗鬆症の研究も近年進んでいますが人工股関節を一生涯保持出来るとは限りません。再手術の可能性もあることを考慮し、あくまでも人工股関節は最終手段であることを忘れないようにしましょう。

Hip Joint コラム履歴

第59回 コロナパンデミックとスペイン風邪

第58回 「ヒップの摩耗の問題:本当にあった話です」

第57回 赤ちゃんの股関節を守るため、生まれてすぐからの予防を!

第56回 コロナ、ステイホームで思うこと

第55回 高齢者の骨粗鬆症と大腿骨頸部骨折

第54回 変形性股関節症に対する温泉療法について

第53回 国内におけるカダバートレーニングの現状

第52回 2020年(令和2年)
新春 明けましておめでとうございます。

第51回 「ヒップペイン」

第50回 人工股関節の術後合併症

第49回 『きょうよう』・『きょういく』と股関節

第48回 股関節の痛みとロコモティブシンドローム

第47回 股関節の神秘

第46回 生き方が役に出る

第45回 変形性股関節症に対する骨切り術とテクノロジー

第44回 変形性股関節症「寛骨臼(臼蓋)形成不全に起因する

第43回 3Dプリンターの医療機器への応用

第42回 中間管理職から見た股関節手術を取り巻く教育の現状

第41回 Wolffの法則

第40回 医者と弁護士

第39回 骨の銀行があることを知っていますか?

第38回 悠々閑々外来の妙

第37回 股関節手術でAIは整形外科医を超えられるか?

第36回 テロイド治療に伴う大腿骨頭壊死の発生予防を目指して

第35回 股関節手術と今後の健康維持

第34回 財団30周年に寄せて

第33回 大腿骨近位部骨折(足の付け根の骨折)は早く治療を!

第32回 腰痛は人間の宿命です-腰椎・骨盤・股関節の連携-

第31回 股関節の手術と健康寿命

第30回 弘法は筆を選ばず?

第29回 大腿骨近位部骨折が増加しています
-50歳を超えたら骨折予防-

第28回 呼吸を整え体を動かそう

第27回 人工関節の寿命は予測できるの?

第26回 人工関節手術後の早期社会復帰と保険医療制度の疲弊

第25回 赤ちゃんの股関節脱臼に思う

第24回 新しい高齢者像を求めて、
メディカルフィットネス 医学体操の活動

第23回 指定難病の特発性大腿骨頭壊死症をご存知ですか?

第22回 人工関節置換術の適齢期は?

第21回 あなたはサルコペニアですか?

第20回 赤ちゃんの股関節脱臼に注意しましょう

第19回 股関節手術の思い

第18回 いつまでも健やかに

第17回 「セメントレス人工股関節」

第16回 「骨切り術も再生医療です!!」

第15回 「骨粗鬆症の激増と過激な減量、ビタミン・ミネラル不足」

第14回 「大腿骨頭はどうして球形なの?」

第13回 「人生いろいろ、手術もいろいろ」

第12回 「股関節疾患の過去、現在、未来」

第11回 「国産医療機器メーカーとして」

第10回 「「股関節」という言葉で思いついたつれづれなること」

第9回 「股関節のインプラント治療」

第8回 「患者会としての30年」

第7回 「私の股関節と剣道」

第6回 「股関節唇損傷自己体験記」

第5回 「人工股関節全置換術より高い満足度を求めて」

第4回 「人工股関節置換術と関節温存手術」

第3回 「乳児股関節脱臼―歴史は繰り返す―」

第2回 「股関節疾患今昔」

第1回 「肝心要は股関節から」


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