日本では股関節で手術を受ける方の多くは、子供の時の発育性股関節形成不全の後遺症による変形性股関節症で、長期間股関節の痛みに悩んでいます。このため、最も元気な時期に仕事・趣味・スポーツなど自分のやりたいことを十分できないことが少なくありません。
股関節の手術は、自分の骨を温存する骨切り術と、人工関節置換術があります。最近、骨切り術も改良が加えられ、より低侵襲で手術を行うことが可能になっています。しかし、ある程度以上変形が進んだ場合、人工関節の適応となります。21世紀になり、人工関節は,手技・材質が著しく向上し、今後耐久性も向上することが期待されます。さらに周術期の看護やリハビリテーションも進歩し、早期に社会復帰することが可能です。
人工関節手術を受けることにより、痛みが軽減するだけでなく、歩く・階段昇降能力・家事など日常生活能力が向上します。それに加え、仕事や水泳・ダンス・ゴルフ・卓球・テニス・山歩きなどのスポーツ活動、さらに旅行・美術館巡りなど様々な趣味など自分のやりたいことを躊躇無くやることが可能になります。そこで、手術を受けるに際して、人生は一度しか無いこと、そして今の状況が自分に満足できるか、股関節の痛み・機能障害が自分の人生を邪魔していないかを自分でよく考えることが重要です。
手術を受けたあと重要なことは、定期的に受診することです。人工関節は長く使用するので、定期的にチェックして何か問題が起こっていないかを早期に把握することが重要です。医療側でも長期間定期的に診察することにより、各種の問題点を抽出し、今後のさらなる向上へ結びつけることができます。日本でも人工関節の登録制度が始まっていますが、今後さらに拡充していく必要があります。
「手術を受けたことを忘れてしまった。」「人工関節が入っていることを忘れてしまった。」と言われる手術を目指して、さらに研鑽を積んでいきたいと思います。