第66回 Hip Joint コラム

人工股関節全置換術術後でも足の爪が
自分で切られない患者様に対する自助具を開発しました!
花之内 健仁
大阪産業大学 工学部 機械工学科 医工学研究室 教授
 大阪産業大学 工学部 機械工学科 医工学研究室の花之内 健仁(はなのうちたけひと)と申します。自己紹介からの話ではなはだ恐縮ではございますが、私は、医学と工学の接点で貢献・活躍できる医師を目指し、卒後、整形外科医、特に関節外科を専門として活動しながら医工学の研究活動をしてまいりました(現在も大阪は羽曳野市にあります、運動器ケア しまだ病院にて、人工関節の手術、股関節鏡の手術を担当しています)。平成19年度には当財団の研究助成を頂いたこともございます。研究分野は、3Dプリンタ・バイオプリンタ・センシング実験機器・バイオメカニクス・医用画像解析・医療・ヘルスケア機器開発など機械工学と親和性の高い領域で多岐にわたるのですが、今回は股関節の手術を受けられる予定の患者様もしくは受けられた患者様に対する自助具の開発のお話をさせてもらいます。

 自助具とは、読んで字のごとく、身の回りの動作がより便利に、より容易に自分で行えるよう工夫された道具のことを指します。では、“足の爪が自分で切られない“とはどんな状態のことなのでしょうか?
 イメージを次に示します。
足の爪が自分で切られない“とはどんな状態1
 手を足の方に持って行っても、足まで届かない状態のことをいいます。いろんな原因が考えられるのですが、その1つとして、股関節の病気があります。股関節の病気で股関節がうまく動かせないことから手が届かなくなります。関節外科医として修練していた時に、実は人工股関節の手術をした患者様でも自分の足の爪が切られない方がいることを知りました。調査しますと凡そ15%程度もいることがわかりました(3Dプリンター×テーラーメイド医療 実践股関節手術 金芳堂 2016年)。関節自体は人工関節手術によって動きがスムーズになるのに、手術までの待機期間が長いことからおしりの筋肉が伸びにくくなってしまっていて、曲げようにもそれが邪魔してしまって曲げられない。そんな状況が起こってしまうのです。
足の爪が自分で切られない“とはどんな状態2
そのような患者様は、手術が終わったあとでも、ご家族の方に切ってもらうなど、不自由をなさっていると聞き、なにかしらの助けになればと考えたのが、今回ご紹介する自助具です。

実用新案爪切り

実用新案

 コロナ禍の最中でしたが、2020年実用新案(特許に関連した知財の一つ)を取得しました。通常の「電動爪削り器(ネイルケアに使用する物)」と「突っ張り棒(100均で購入可能)」と、それらをつなぐ「部品」でできています。突っ張り棒の1つを足の甲に設置し、他方に固定されている電動爪切りを棒を操作することによって自在に動かすことが可能になります(下図はその例)。

実用新案爪切り実用例

 また、オプションで、市販の内視鏡カメラを装着して、スマホを介して、削っている部分を
拡大してみることが可能となります(下図)。

実用新案爪切り+内視鏡

 まだ、製造開発業者様をみつけることはできておりませんが、自身の研究室で掲載したところ、“ほしい!”というご反響も頂きました(もし、ご興味を持っていただける業者様がおりましたらお声掛けを宜しくお願い致します)。

 このように常に医師として臨床現場で役に立つ医療・ヘルスケア機器開発を含めた医工学研究をしていきたいと思っております。今後ともよろしくお願い申し上げます!
このような記事掲載の機会を頂きました財団に対しまして厚く御礼申し上げます。




Hip Joint コラム履歴

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股関節健診にひっかかった!!時に読む記事

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第66回 人工股関節全置換術術後でも足の爪が
自分で切られない患者様に対する自助具を開発しました!

第65回 人工股関節は生身の股関節より性能が良い!

第64回 2021年新年の展望

第63回 股関節と尿失禁(尿漏れ)の意外な関係

第62回 大切な「何か」

第61回 大腿骨近位部骨折と骨折リエゾンサービス

第60回 私の股関節と剣道 第2報 2週間の入院経験

第59回 コロナパンデミックとスペイン風邪

第58回 「ヒップの摩耗の問題:本当にあった話です」

第57回 赤ちゃんの股関節を守るため、生まれてすぐからの予防を!

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第55回 高齢者の骨粗鬆症と大腿骨頸部骨折

第54回 変形性股関節症に対する温泉療法について

第53回 国内におけるカダバートレーニングの現状

第52回 2020年(令和2年)新春明けましておめでとうございます。

第51回 「ヒップペイン」

第50回 人工股関節の術後合併症

第49回 『きょうよう』・『きょういく』と股関節

第48回 股関節の痛みとロコモティブシンドローム

第47回 股関節の神秘

第46回 生き方が役に出る

第45回 変形性股関節症に対する骨切り術とテクノロジー

第44回 変形性股関節症「寛骨臼(臼蓋)形成不全に起因する

第43回 3Dプリンターの医療機器への応用

第42回 中間管理職から見た股関節手術を取り巻く教育の現状

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第40回 医者と弁護士

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第38回 悠々閑々外来の妙

第37回 股関節手術でAIは整形外科医を超えられるか?

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第35回 股関節手術と今後の健康維持

第34回 財団30周年に寄せて

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第32回 腰痛は人間の宿命です-腰椎・骨盤・股関節の連携-

第31回 股関節の手術と健康寿命

第30回 弘法は筆を選ばず?

第29回 大腿骨近位部骨折が増加しています-50歳を超えたら骨折予防-

第28回 呼吸を整え体を動かそう

第27回 人工関節の寿命は予測できるの?

第26回 人工関節手術後の早期社会復帰と保険医療制度の疲弊

第25回 赤ちゃんの股関節脱臼に思う

第24回 新しい高齢者像を求めて、メディカルフィットネス 医学体操の活動

第23回 指定難病の特発性大腿骨頭壊死症をご存知ですか?

第22回 人工関節置換術の適齢期は?

第21回 あなたはサルコペニアですか?

第20回 赤ちゃんの股関節脱臼に注意しましょう

第19回 股関節手術の思い

第18回 いつまでも健やかに

第17回 「セメントレス人工股関節」

第16回 「骨切り術も再生医療です!!」

第15回 「骨粗鬆症の激増と過激な減量、ビタミン・ミネラル不足」

第14回 「大腿骨頭はどうして球形なの?」

第13回 「人生いろいろ、手術もいろいろ」

第12回 「股関節疾患の過去、現在、未来」

第11回 「国産医療機器メーカーとして」

第10回 「「股関節」という言葉で思いついたつれづれなること」

第9回 「股関節のインプラント治療」

第8回 「患者会としての30年」

第7回 「私の股関節と剣道」

第6回 「股関節唇損傷自己体験記」

第5回 「人工股関節全置換術より高い満足度を求めて」

第4回 「人工股関節置換術と関節温存手術」

第3回 「乳児股関節脱臼―歴史は繰り返す―」

第2回 「股関節疾患今昔」

第1回 「肝心要は股関節から」


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