変形性関節症はロコモティブシンドロームの一因であり、病気が進行しないようにするためには肥満を避けることも必要となります。体重が気になっている多くの方々が「体重を落としてください!」と先生から指導を受けたことがあるでしょう。しかし、その多くがダイエットに苦しみ、失敗しているのは、様々なダイエットサプリのCMがメディアを賑わせていることからも想像に難くありません。
三大栄養素である、糖質・脂肪・タンパク質はどれを食べ過ぎても最終的には脂肪として蓄えられます。体にとって余分な栄養を、なぜ私たちは取り続けようとしてしまうのか?甘いものを、あるいは酒を飲んだ後の帰り際のラーメンを、なぜあなたはやめられないのか?健康に良くない食習慣を改善しようとしてもなかなか改善できないという人は少なくないでしょう。そこには、報酬系という脳の仕組みが関係しています。
もう満腹なはずなのに食後のデザートは食べられる…。そう!『別腹』という言葉をよく耳にしますね。目の前にある食べ物を見て、脳の前方にある大脳前頭前野が「美味しい!美味しそうだ!」と判断すると、視床下部からオレキシンというホルモンが分泌されます。オレキシンは胃の運動を活発にして小腸へ食べ物を送り出します。すると、さらに食べ物が入るスペース、すなわち『別腹』がつくりだされてしまう、というわけです。
また、美味しいものを食べると脳は報酬を得たと判断し、大脳基底核からは快楽のホルモンであるドーパミンが放出されます。このドーパミンの働きによってさらに「食べたい!」という欲求が高まり、いわゆる『やみつき』という状態に陥ってしまいます。
この『別腹』や『やみつき』を生み出しているのは、脳の内側前頭前野の働きと考えられており、短期的報酬の判断と関係しています。一方、背外側前頭前野は「理性」に関わる部位であり、長期的な報酬の価値を検討し、行動を調節する役目を担っています。目の前の美味しいものを「食べたい!」という欲求を抑えるためには、このまま食べ続けると自分の健康にどのような害がもたらされるのかを考えなければなりません。長期的視野に立って、「理性」に関わる背外側前頭前野の活動を活発にして自己管理を強化していく必要があります。
食欲をコントロールして体重管理をしていくためには、このような脳のしくみを知り、短期的報酬に惑わされないようにすることが大切なのです。
